2014年2月6日木曜日

第十幕 かもめ食堂 

「かもめ食堂」に、見る側を高揚させるようなエキサイティングなシーンはありません。
それでもひきつけられるのは、平凡な人たちの平凡な夢を描いているからでしょう。




平凡ではないのは舞台がフィンランドであること。同じ海外でも、アメリカよりフィンランドのほうが穏やかで静かというイメージがある。「ムーミン」などで知られるとはいえ、日本人にとってまだまだなじみのある国とはいいがたい。
誰にでも届きそうだけど、誰にも知られたくないひそやかな幸せ。この映画はそんな気持ちを抱かせるのです。


メインキャストの三人も、失礼を承知でいえば、どこにでもいそうな女性。でも好感がもてます。
かもめ食堂を切り盛りする主人公・サチエ(小林聡美)。それを手伝うミドリ(片桐はいり)、マサコ(もたいまさこ)。彼女たちの頭にあるのは、おいしい食事を提供するということ。そしてお客さんが一人でも増えてほしいということ。


三人とも事情を抱えてフィンランドにやってきたようなのに、あえてそれぞれの心のうちに立ち入らない。食堂での会話や仕事を通じて、無言のうちに分かり合っている。


この映画の唯一のクライマックスといえなくもないのは、サチエの念願かなって、かもめ食堂が初めて満席となるシーン。ここでも女性たちが手をたたいたり、抱き合って喜ぶことはありません。ただ静かに喜びをかみしめるだけです。


他人に誇るような輝かしい経歴はなくとも、なにげない一日一日を積み重ねることの大切さ。そんな気持ちに立ち返れることが、公開から年を重ねても、この映画が支持され続けている理由なのでしょう。



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